2007年3月11日日曜日

【輝く風】絶壁のうしろの丘にて

カウアイ島の北部、ハナレイ・ベイを望むプリンスヴィルは、
とても安らぐ場所だ。
大平洋が眼下に広がる絶壁のフチ沿いに緑の丘が細長く続き、
素朴なコテージが点在している。
その中のひとつ、Pali ke kua に滞在したときの感動は今でも鮮明に覚えている。

今回は、その時に撮った3点の写真で、ゆったりとした時間の流れと
「LINO MAKANI」を感じて頂けたらと思う。


「パリ・ケ・クア」はハワイ語で「断崖絶壁のうしろ」という
そのまんまの名前のアコモディションで、
先ず驚いたのが、チェックインすることもキーもなく、
メールで事前に知らされたパスコードを玄関ドアに付いている装置に入力して
(と言っても3桁の数字をただ回すだけの超レトロな鍵なのだが)入室し、
滞在期間中自由に出入りして、チェックアウトもしないで出て行くシステムだ。

まるで以前からそこに住んでいたような気分にさせてくれる、
とても気のきいたさりげなさに大感動。
リビングからは、芝生のバックヤード越しに洋々とした碧い海が一望できた。

ラナイに出て、冷えたビールを片手に
遥か下の方から聞こえてくる潮騒を聞きながら、
Na Pali Coastの北のはずれに位置する、剣のように険しい稜線の向こうに
ゆっくりと陽が落ちてゆくのを眺めていた。

ゆったりした時間が流れる中、
肌をくすぐる風が少しずつ冷たさを増して心地良い。


地球はこんなにも壮大で美しく、
生けるもの全てに惜しみなくこの愛に満ち溢れた世界を与えてくれているのに…
なんてちょっとメランコリックな気分に酔いしれる。

今ここでこうして至福の時を過ごせていることに感謝しながら、
この最高に美しい光景を大勢の人々に見せてあげたい。
写真という手段で切り取ったボクの感動をみんなと共有したい。
という衝動が心の奥底から沸き出して、
ゆっくりとカメラのシャッターを切りはじめたのだ。


《わけもなく海が好きなわけ》

子供の頃、自転車でちょっと遠乗りすれば海に行ける所に住んでいた。
10歳を過ぎた頃から、ボクはひとりでよく海に出かけた。

キャンプサイトが設えられた、岩がゴロゴロした海岸。
漂着物や海藻で汚れた、人気のない砂浜。
生臭さと日向臭さが入り混じった小さな漁港。
重油の匂いが漂い大型船のエンジンが低く唸り続ける港の桟橋。……
そこが「海」であれば、どこへでも行ったし、
どこもが大好きな「海」だった。

そこで夕陽が沈んで行くのをじっと観ているのが大好きだった。
夜になって家に帰ると、家族は皆夕食を済ませ、テレビを観ていた。
テーブルの上にはボクの分だけ膳が残されていて、
母は「もっと早く帰って来ないと片付かないじゃないの。」と
妙な叱り方をしながらもなんだか楽しそうだった。
だからボクは土曜日の午後になると、
懲りずに自転車で海に向かうことをやめなかった。

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