2007年5月20日日曜日

【輝く風】Under the coco tree


若い頃、アメリカ本土を放浪中にフロリダのキーウエストに立ち寄った事がある。
ヘミングウェイの「海流の中の島々」を読んで、
そこに出てくる波止場やバーの空気を
実際に吸いたくなったのがきっかけだった。
当時ダスティン・ホフマンが主演した映画「真夜中のカウボーイ」張りに
ニューヨークから、まる二昼夜グレイハウンドに乗り続けて・・・。
ようやく着いたその日に熱が出て体調を崩し、
民宿のようなB&Bで寝込んでしまったのを覚えている。

あれから二十数年、このマウイ滞在中に、
もう一度じっくり読み返してみたくなった。
で、部屋から文庫本とカメラバッグと
キンキンに冷えたビールをコークの紙コップに注いで持参。
コンドの中庭から外れた、誰もいないエリアのヤシの木陰の芝生に寝そべった。
土曜日の昼下がりなので、ビーチもプールも賑やかだ。
でも、この場所には僕しかいない。

けだるさを増幅させる生ぬるい風がなぜか妙に心地いい。
さあ、のんびり読書しよう。今日は写真を撮る気分じゃない。
・・・と決めた矢先、
どうしても1カットだけ撮っておきたくなってしまった。

どうでもいいような、どちらかというと、つまらない風景。
青い空と蒼い海、そしてヤシの木がなぜか却って心をいじめる。
倦怠感や虚しさに自分を落とし込むような、重く切ない景色。

そんな写真をどうして撮ったのか。
それは、この時の自分に対する漠然としたやるせない思いを
忘れないための記念写真としてだろうか。

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